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2011年8月13日 (土)

プロファイ(プロジェクト・フォーメーション、プロジェクト・ファインディング)における2,3の留意点・・・ 開発民俗学の視点から (その2)<講座>

問題意識:

上記の目次では、非常に盛り沢山の内容となってしまったので、実際の学会発表ではポイントを3分の1くらいに絞らないといけないと思いますが、なぜこのようなことを今、考えているのか。それは結局、開発援助(官民含む)の実態と現状に対する不満です。

政府開発援助の世界に16年働いてきて、私はほとんどのODAのスキーム、開発調査、無償資金協力、有償資金協力、専門家派遣、プロジェクト評価などの業務を直接見聞きしてきましたが、そのなかで気になったことは、主に2点あります。

1. ステークホルダーのあいまいさ(カウンターパートが役人であることは間違いないが、開発対象地域の‘住民’が見えてこないこと)

2. 事業実施側(開発コンサルタント含む)の、先行事業や現地で実際に動いているプロジェクトに対する無関心

結局、自分達が思うブループリントの立案や事業実施には関心があっても、今、現在、その開発される現場で何が行われているのか、受益者自身の声といったものに対する関心の低さといったものを、さまざまなプロジェクトで感じました。

特に、政府開発援助の場合、事業規模が大きい場合が多いので、どの段階から地域住民を巻き込むのについては、非常にセンシティブにならざるを得ない。これは政府機関に対しても同じ事で、その気にさせるのはいいが、実際に実現可能か、絵に書いた餅では相手を失望させるだけということがわからないわけではありませんが、あまりに中央で考えていることと、事業が実施される地方での実状・現状との隔たりが多すぎる。カウンターパートである中央の役人は、実は現地の実態を知らないことが多すぎる。ということに気がつきました。

結局、ターゲットとなる住民がどんな人たちなのか、どんな生業で生計を立てているのかがよくわからないままに開発計画を立ててしまう。

そして、実際に現地ですでに多くの事業が実施されていたとしても、その成功と失敗の経験が、新しいプロジェクトの当初の時点から反映されていない。結局、似たような失敗をしてしまう、もしくは、すでに現地にある有効なネットワーク(人脈、ファシリティーなど)を活用できない、さらにはすでにあるのに、同じようなものを新たに設計して作ろうとしている。

こんな非効率で訳がわからないことが実際に行われています。

先行事業との絡みでいえば、日本のNGOの視野の狭さ、他国プロジェクトへの無関心ということも非常に目に付きました。

現場に立ってみると、実はさまざまなステークホルダーがすでに多くのプロジェクトを動かしています。しかしながら、これら‘小粒’なプロジェクトは、プロジェクト対象者を、‘先住民・マイノリティ’、‘社会的弱者・女性、子供’などと事業開始時点でターゲティングしているために、プロジェクトの最初から、その‘枠’に入らない周辺住民は、自動的に選別されプロジェクト対象者から落とされているケースが非常に多いです。

その場合、何か起こるか、同じ地域における開発の恩恵を受けるものと受けないものがでてきてしまう、特に近接している隣近所の中で不平等が生まれているケースもありました。

また、プロジェクト側で排斥された地域住民とは、別に、‘メジャー’な地域住民から排除されている‘見えない地域住民’についてのアプローチが不十分になりがちというか、外部者であるプロジェクト実施者が、全く気がつかないケースも多いです。

そのような既存の不平等や差別にどうアドレスできるのか、プロジェクトの実施によって、既存の差別を固定して住民間の格差をさらに広げてしまうという問題もあります。

つまり、現場の実態把握ということが、非常に重要であるのにもかかわらず、実はプロジェクト形成時には十分調査できていないことが多いのです。

官民をとわず、業務指示書(TOR)というものがプロジェクトの業務範囲を決めているのにもかかわらず、果たして適切な業務指示がかけるだけの下準備、つまり適切なプロジェクト形成、すなわちプロファイができているのかというのが、私の問題意識です。

そして、これは社会環境配慮ガイドラインのあり方にも密接に絡んできます。

間違ったもしくは不十分な業務指示書からは、よいプロジェクトは生まれない、しかしながら、実際には、プロジェクトの進捗過程で不断に業務指示書の書き換えが現場レベルでは行われていて、結果的には、なんとなく成功にこぎつけるべく関係者は多大な努力をするわけですが、いずれにせよ、‘よい’業務指示書があるに越したことはないわけです。

地域開発と地域研究を結びつける、地域と中央を結びつける、なにより人と人とを結びつけることが開発民俗学の目指すところであると私は思います。

といったところを、具体的にまとめられたらと思っています。

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