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2008年12月22日 (月)

質問その2 経済インフラと社会インフラの違いとは? 『対談 開発コンサルタントとは?』

 質問(その2) つかさ  2003/08/10 () 01:47

なるほど、昨今では技術系に加えて社会科学系のニーズも若干ではあるが増えてきているということですね。

次に質問させて頂きたいのは、公共事業と一口にいっても様々なプロジェクトが考えられると思いますが、大雑把にいって経済インフラと社会インフラに分けられるかと思います。経済インフラ(道路・鉄道・港、等々)の場合ですと、建設費用が幾らで、その施設が対象国内外の流通量をどれくらい上げて、全体としてどれほどの経済効果があがるのか。といったことを計算するのが、開発コンサルタントの業務のように推測しております。ただ、社会系インフラ(人々のBHNに関する施設)の場合、開発コンサルタントがどのように関わっていっているのかが釈然としません。経済効果に対して社会効果というのは、非常に長期的なヴィジョンを必要としますし、何より"どうやって"計るか、で大分出てくる値が変わってしまうのが常です。

加えて、開発コンサルタントは民間の会社ですから、"利益"を出さない限りは、というより"利益"がでるところにしか行けないのではないのだろうか?というふうに素人としては考えてしまいます。その意味において、ODA案件に関していえば、アフリカ諸国よりアジア諸国、社会インフラより経済インフラを重要視しているのでは?と推測しています。長期的な視野とあやふやな結果しかでないかもしれない社会インフラに対して、開発コンサルタントがどのように関わっているのか、現状を教えて頂けたらと思います。

最後に、しばやんさんが案件受注のところでJICAを真っ先にあげたのは少し意外でした。どちらかといえば、JICAよりもJBICからの案件の方が多いのではと考えていたからです。経済インフラによく使用される円借款やOOFをとりしきっているのはJBICですからね。ここ数年の円借款部分の大幅な減少にともない、JICAからの案件受注の割合が高まった。その結果として、社会インフラの相対的割合も上昇し、社会学系の知識は開発コンサルタントにとってもより重要性を増してきている。ただの推測ですが、実際のところはどうなんでしょうか?


 回答(2-1) しばやん  2003/08/14 () 00:26

なかなかヘビーな議論になってきました。

手塚治虫風に言えば、なんとなくひょうたんつぎ*1か、ピノコのアッチョンブリケ*2をいれたい気分です^^?

さて、つかささんの質問の順に沿って、回答していきましょう。

まず、最初のフレーズ、「昨今では技術系のニーズ~」のフレーズについてですが、実は以前からニーズというか問題はそもそも存在していたのです。ただ、ハード中心に援助効率を求めてきたので、そこまで痒いところに手が届かなかったというか、構成団員のなかで、なんとかソフト配慮についてもお茶を濁してきたというのが、本当のところではないかと思います。

経済インフラと社会インフラの件、ちょうど15年ぐらい前から、BHNBasic Human Needs)という概念や、10年ほど前から「社会開発」というワードが勃興してきたのですが、ここで気をつけてほしいのは、開発コンサルの現場というか、実態としてはラベリング自体には大した意味がないというが、経済インフラも社会インフラも、我々にとっては同じことです。

まさに、つかささんのいう「経済効果に対して社会効果というのは、非常に長期的なヴィジョン」という問題は、われわれ開発コンサルタントやドナー、途上国政府の政策策定者みんながずっと長い間、あーでもないこうでもないと、日々の実践の中で考えつづけている古くて新しい問題なのです。

注:*1,2 共に手塚治虫のマンガのキャラクター。*1は、手塚がシリアスな場面でふっと力を抜きたいときにいれるバーバパパみたいな正体不明なへんなキャラクター、*2は、いわずとしれた、『ブラックジャック』のアシスタントの女の子です。(2004/5/10 加筆)

9 回答(2-2) しばやん  2003/08/14 () 00:29

まず、開発の実務的なステージとして、下記のステップがあることをご確認ください。

①国家政策のレベル(長期計画)
通例20年から50年先を見越した計画。マスタープラン、通称Master Plan(M/P)と呼ばれている。

②プログラムレベル(セクターレベル、中期計画レベル)

上記の国家政策課題を分野別(通例セクター、例えば電力とか鉱工業とか農業とかで分けることが多い)に短期(5年後)、中期(10年から15年後)をターゲットとする構想を立てる。

③プロジェクトレベル(個々の案件レベル)

上記②の個々の事業をプロジェクトといい、この近未来に実現しなければならない課題について、フェージビリティ(事業実施可能性)を調査する。俗にFeasibility Study (F/S)という。

④事業(プロジェクト)の実施

上記③の調査によって事業実施の効果、経済性等、投資に対して一定以上の実施効果が見込まれる場合に、ようやく事業の実施となります。

⑤事業の維持管理(OM)もしくはモニタリング評価(M&E

今までは、上記④の事業の実施だけでよかれとしてきましたが、この20年ぐらい事業実施後にうまくハード(施設や機材)の維持管理(Operation and Maintenance)がなされないという批判が高まり、OM計画の立案と実施体制の確立(受益者組織もしくは政府組織の能力強化)や、その後の、プロジェクトのモニタリングや評価について大きな関心がもたれるようになったのが、この15年ぐらいのことです。
(当然、援助の失敗の屍が累々と、顕著に見られるようになったのは、それ以前からでしたが、ドナーも被援助国もコンサルタントも、真面目にどうにかしようと組織的に動き出したのは、それほど大昔のことではありません。)

10 回答(2-3) しばやん  2003/08/14 () 00:31

ここで、つかささんの最後の質問に戻ると、上のステージを日本のODAの仕組みに当てはめると、①~③にかかる、相手国政府の国家計画づくりを手助けするのが、技術協力というスキームで、これこそ、まさにコンサルタントが、それぞれの得意な分野の専門家集団として国際開発の分野で貢献しているところなのです。

つまり、政策の立案レベルの計画から、具体的な施設の設計、そして、上記④でいう事業の実施にあたっては、先方政府やドナーの側にたち、技術的に中立の立場で、機材やサービスの調達(これには、機材自体の入札や建設業者や商社の選定や工程管理、施工管理などを含みます)を行うのです。

たしかに、JBICの円借款事業は金額も事業の規模も大きいので目立ちますが、その事業実施の前には、上記①~③までのすべてのステップを経て実現化しているのです。そういう意味でJICAに限りませんが調査段階(国際金融機関ではTA(Technical Assistance)と呼ぶケースが多い)から特定のプロジェクトに関わっていないと、事業実施(④の段階)まで受注することは、ほとんど不可能です。

したがって、「ここ数年の円借款部分の大幅な減少にともない、JICAからの案件受注の割合が高まった。その結果として、社会インフラの相対的割合も上昇し、社会学系の知識は開発コンサルタントにとってもより重要性を増してきている。」というつかささんの指摘は、事業実施のステージという面からは、ちょっと違っていますね。

ただ現在の国際援助の潮流からみると、特に③(個別案件の実現可能性調査F/S調査・日本ではJICAが実施)と④事業の実施(日本の例では、JICAが実施促進をする無償資金協力およびJBICが貸し付ける円借款の主に2つのスキームがあります)の、いずれの過程においても、社会学系の知識や実際に事業計画自体への反映は重要で、開発コンサルタントの間では、俗に「ソフト分野」といって、各社、腕のふるいどころです。

ちなみに、いままでの俗に箱物援助(さらには、橋や病院などの、道路整備などのそして、農地整備などでの開発と細かく言い分ける場合もあります)は、「ハード分野」といっています。

11 回答(2-4) しばやん  2003/08/14 () 00:32

以前、どこかの日本の総合商社のキャッチフレーズで、「宇宙ロケットからカップラーメンまで」というのがありましたが、開発コンサルタントというものは、開発の川上(国家政策レベル)から川下(個々の事業の実施)までトータルでコーディネイトする援助の専門家なのです。

以前、「大臣からこじきまで」といったのは、そういう現実的な意味もあるのです。あるときには、背広をビシッときて国家元首と対峙し、またあるときは、作業着に地下足袋で現場を駆け巡る、そんな職業なのです。

確かに民間企業という側面はありますが、欧米では医者・弁護士・コンサルタントという専門性・倫理性の高い職業ですし、現実に世界に通用する専門知識をもった専門家を雇用するということは非常に経営的には厳しいことです。(民間であるがゆえ、すべて競争入札で、競争に勝てなければ仕事にありつけません。)

そんな体力的にも精神的にも厳しい状況で頑張っている仲間が多くいます。開発コンサルタントは、通例、一年の半年以上、海外で仕事をしています。(これは一国に限りません。同時に2、3案件をこなしている人もいます。)

ですから、家庭の問題、奥さんは日本でお留守番が多いですし、子育てや子供の教育の問題など、本人の意思だけでなく、家族の理解が大いに必要な仕事なのです。

ちょっと、こちらもリキが入りすぎましたが、コメントをお待ちしています。

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